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稲作農家時給10円の話から

 

新米がとれ始まってもいっこうに米の価格は下がらず、それどころかジワリと上がっています。

今年くらいの値段なら農家さんも再生産できるなと安堵していましたが、そんな中(稲作農家時給10円)の記事を目にしました。2021年、2022年の話なので少し前の話になりますが、1戸あたりの稲作農家の収益から経費を引いた農業所得が1万円、農業労働時間を約1000時間として時給は10円になるというわけです。

今年は福島の米の概算金価格がコシヒカリで1俵2万でしたが、2021年当時はその半値ほどで、交付金がなければ赤字でした。

 

コメ政策は戦後の食糧難にさいし、生産者が米を安心して生産できること、消費者には主食となる米の安定供給を図ることを目指しすべてを国の管理下に置くことから始まりました。すべての米の供出を前提として生産コストを補償する価格設定がされたのです。令和6年産の米が高いという声も聞きますが、この時代を知る方からは「今までが安すぎたんだ。やっと戻った」との声が多く聞かれます。

収量の増加や食生活の変化を受け米余りの時代に突入してからも米を高く買って安く売った結果、国は大赤字となり減反政策や自主流通米市場の形成となり、1995年食管法は廃止、新食糧法が制定され現在のような流れとなっていきます。

 

国が関与するのは備蓄米とミニマムアクセス米のみ。政府の下支えが無くなったことで主食である米も価格競争の波にもまれ再生産できないほどの価格まで下がりました。なぜここまで下がっても米の生産ができたのか、私が個人的に思うに農業労働時間が1000時間、働きながらでも稲作を続けられる兼業農家の存在が大きかったからだろうと思います。親の世代は絶対田畑は荒すなと言われていた世代、面積は減らしても作り続けてきました。

 

しかし現在は長らく続く景気低迷に、作れば作るほど赤字の稲作を続けることもできず子供に米を作ってくれとも言いづらくなっています。

これからは大規模農家に集約してそこに直接補償する方向にもっていく流れになるのかもしれませんが、どこまで集約できるものか。私は小規模農家の存在を忘れないでほしいと思っています。自家消費分以外の米を出荷するくらいの小規模農家が日本では大多数のはずで、彼らが有機栽培や特別栽培など手間のかかる作物を担っている面もあるからです。

 

どんな栽培方法でも再生産できる金額で買い上げられること。これが人口減少社会であっても食糧の生産を守れる唯一の方法なのではないでしょうか?