令和5年産は今までにないほど等級検査が難しかった年でした。最大の原因は高温障害による心白が原因で整粒歩合が1等に求められる70%を超えられなかったことによります。当店の検査でも平年より10%以上整粒歩合が悪く泣く泣く2等をつけることが多くなりました。今までは検査官の目視がメインでしたが、検査官の経験や感覚によるものが大きく判定に差が出ることから、穀粒判別機を併用することでより正確な検査が可能になったためです。
実際、小売店に聞いてみると(これが1等米か?)と思って調べてみると70%どころか2等米基準の60%もいかないものが出てくるそうなので、実際の1等米の比率はもっと低いだろうと予想しています。
当店のお客様は福島市の南部と隣接する二本松市に圃場を持つ方がほとんどですが、地形や水の有無、栽培履歴を等級検査の結果や収量に当てはめてみると、いくつか気づいた点があるので箇条書きで書いてみたいと思います。
●平地よりも中山間地域の方が1等米比率が多い
これは言わずもがな、暑さの違いです。今まで寒くて(水が冷たくて)コシヒカリが作れないようなところの方が品種にかかわらず等級、食味がとても良かったです。川の上流にあたる所は水不足になることもなかったため高温障害になるリスクは少なかったのだろうと推測します。
●ケイ酸やヨウリンを使用した圃場の方が稲の光合成する能力が高く収量も多い
ケイ酸(ソフトシリカなど)を入れた田んぼは稲が固くなり光合成がしやすくなるためデンプンを多く作ることができます。またヨウリンは有機物の分解に必要な微生物の栄養となり結果地力が上がるため収量も上がります。ただ今は一発肥料のみで作ることが増え、出穂期や穂揃い期に肥料切れをおこす田んぼもあるので色を見ながら適宜追肥も必要と考えています。
●田植えが遅かった圃場ほど1等米比率が多い
これまでの習慣で5月あたまから第3週までに田植えをするところが多い地域ですが、6月に入ってから田植えをしたところはすべて1等でした。平地で水もほぼ他と同条件でしたが、これは一番暑い時期に出穂することを避けられたためと思われます。今までの気象条件ではそれほど違いを感じなかったのですが、猛暑となった昨今はその違いを大きく感じています。稲刈り時期もそれほど大きくは変わりません。しかし、種の消毒や種まき時期も変えなければならないため、意識の改革が必要です。
●深水栽培ができた田は高温障害になりにくい
深水栽培(15cmほど)は冷害対策として有効と言われてきましたが、高温対策としても有効なことがわかってきました。水が深ければ水温もそれほど上がらず稲を守ることができますが、こればかりは雨雪に頼るほかなくすべての圃場で対策をとれるか難しい所です。
●耐暑性の品種を作付けする
品種によって1等の比率が変わることは他県の状況によって明らかですが、残念ながら福島県の主力品種であるコシヒカリや天のつぶは耐暑性に優れているとは言い難い所があります。それを受けて県でも耐暑性の品種を登録の方向に動いています。
今年は大雪となっている所もあるようですが、全般的に暖冬で積雪がかつてないほど少なくなっています。これで昨年のような猛暑となった場合に備え、上記が少しでも参考になれば幸いです。
アマゾン川の支流が干上がったニュースは記憶に新しい所ですが、日本でも大雨以上にこれからは干ばつが問題視されてくるのではないかと思っています。
これからの農業は否が応でも転換点をむかえることになるでしょう。