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常識を疑ってみる

 

種を蒔いてからの育苗期間中はハラハラドキドキの毎日です。

特に今年の福島市は夏の暑さから冬の寒さへのような急激な温度変化があったため、農家さんは毎日気温とにらめっこだったと思います。当店でも念のため予備の種や培土を用意しています。

当店のお客さんはベテランぞろいなのでそうそう失敗はしないのですが、気温や水温、種のちょっとした状態でイレギュラーな状況が生まれることがあります。

例えば、この種もみ。

 

 

農家さんの言うことには、浸水していたら水にぬめりが出てきて病気になったのではないかというご相談。

よく見てみると種もみの中に皮がむけた種があって、それがぬめりの元になっていました。何度も水で洗ってぬめりを取り除き解決、無事播種することができました。*発芽も確認済み

 

別のお客様はずっと浸水しているのにまったく芽が出てこない、出てきても根っこばかりだとのご相談です。

昨年もあって初耳だったのですが、温湯消毒後に冷たい水に浸けると冬眠状態になって発芽しないと知り、その点を確認したら井戸水なので大丈夫とのこと。会長に確認すると、水中の酸素が多いと根が伸び、水温が高いと芽が先に伸びるということで、お客様に水温を上げて様子を見るように伝えました。

しかし、後日芽がきれいに出揃うことは難しいと判断し、蒔き直しすることに。

今度は失敗ができないので、催芽器を借りて使うことになりました。

通常、稲の芽出しは種もみを消毒した後浸水して積算温度を上げ、発芽させるのが普通です。

しかし、昨年浸水した水温が低いために芽出しがうまくいかなかった農家さんから話を聞いたところ、今年はその浸水期間をカット!一度乾かしたら、そのまま温度をかけて発芽に成功したというのです。これで芽が揃うのならば、時間の短縮にもなります。

今まで浸水することが当たり前だと思ってやっていた作業でしたが、やらなくても芽が出るということに驚きを感じるとともに、冷水につけて失敗するならカットしてしまえと挑戦した農家さんに脱帽です。

ちなみに水温に敏感かどうかは品種によって差があるようで、コシヒカリは問題なく発芽しました。

 

*これには後日談があり、ならばなぜ浸水するのか?という話を会長としました。

種もみは自分の根を伸ばし肥料を吸うようになるまでは中に蓄えた栄養で成長する。そのためには糖化させる必要があり積算温度が目安となる。糖化した栄養がなければ黄色い芽が出るそうです。

 

同じように育つかどうかしばらく様子を見る必要がありますが、当たり前を疑ってみることも必要なんだと思いました。